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SUGINO STORY|meanswhile藤崎尚大×bon片岡達彦


自然体のリスペクトが新しい調和を生み出す。
meanswhileのデザイナー・藤崎尚大さんと、演出家の片岡達彦さんはSUGINOで学生時代を過ごした同級生。 meanswhile 2024年春夏コレクション『more with less』のショーを共につくり上げたおふたりに、ショーを通じた“造形×表現”のコラボレーションについて振り返っていただきました。

bon株式会社
演出家
片岡 達彦さん モードクリエーションコース2009年卒業
埼玉県/春日部共栄高等学校出身
meanswhile
デザイナー
藤崎 尚大さん モードクリエーションコース2009年卒業
高知県/岡豊高等学校出身

コロナ禍のランウェイショーで初めてのコラボレーション

― おふたりは学生時代からのご友人だそうですね。コラボレーションは、今回の2024年春夏コレクションが初めてですか?

片岡 今回で3回目です。

藤崎 2014年にmeanswhileを立ち上げてから、ずっとショーをやりたいと思っていたんです。片岡がショー制作の第一線で活躍していたので、企画を相談していました。2020年秋冬にブランド初のランウェイを計画していたのですが、コロナ禍の影響で中止になってしまって。その時製作していたショーピースを無駄にしたくなかったこともあり、翌シーズン2021年春夏に、2020年秋冬と合わせてランウェイを開催しました。

片岡 それが藤崎との最初の仕事だね。

藤崎 ブランド初のショーで、コロナ禍でもある。皆どのようにショーを運営していけばいいのか分からない中、毎日が手探りでした。

片岡 当時はソーシャルディスタンスへの配慮で、観客同士の距離を1m離す必要があったんです。いろいろな制約がある中で、まずブランドコンセプトを念頭に置きました。そして中止になった2020年秋冬の時に構想していたプランをベースに、その時代にあったプランを再構築しました。

シーズンをシームレスに捉えてもいいという発見

藤崎 初めてのランウェイは大変でしたが、発見もありました。ファッション業界ではシーズンごとにショーを開催してコレクションを発表するのが通例ですが、コロナ禍でそれが一度崩れてしまった。僕のブランドも、初めてのショーでは中止になった2020年秋冬と2021年春夏を合わせて開催しました。でもやってみると、それで何の問題もなかったんです。

片岡 それで今回も、2シーズン分をまとめて見せたんだよね。

藤崎 2023年9月に行った今回のショーでも、同じテーマで製作した秋冬と春夏のコレクションを、ひとつのランウェイで発表しました。そもそも私たちの服装は、4つの季節にかっちり区切られているわけではないですよね。例えば真夏だって、富士山に登る時は冬用の防寒具を着るわけですし。あと、僕はずっと9月に春夏のコレクションを発表しても、お客さまがプロダクトを手に取るのが半年後になってしまう業界の慣習に疑問を持っていました。それで「春夏と、いま店頭に並ぶ秋冬のアイテムをミックスしてショーを行えば、ブランド的にもお客さまにもいい面があるんじゃないか」と思ったんです。

meanswhile 2024 S/S-2023 A/W Collection Runwayshow

リアルな都市と自然、夕暮れと夜の混交を生かす

― それが今回の2024年春夏コレクションにつながってくるわけですね。私もショーを拝見したのですが、とてもワクワクしました。皇居の緑を見渡せるビルの屋上、夕暮れから夜に移り変わる時間。あんな場所でファッションショーができるんですね。

片岡 ランウェイショーの開催は、あの建物ができてから初めてだそうです。会場の担当者の方々に正面突破で熱意を伝え、ご快諾いただきました。

藤崎 誰もやったことのない会場でやるというのはブランドとしてプレゼンスが高いので、僕も満足しています。

片岡 一度ショーを発表すると人の記憶にだけでなく、写真や映像としてこの先もずっと残るから。どのような切り取られ方をしても、何年先に見てもその時に納得できるようなショーにしたかった。

藤崎 屋外だから、天気も含めて運任せ。それも含めて片岡に賭けてみようと(笑)。

片岡 高円寺の気象神社へ「晴れますように」ってお願いしに行ったからね。藤崎 本音を言えば「観客の苦にならないのなら、ある程度の悪天候もありかな」と思っていました。道具としての洋服を追求して、アウトドアウェアの要素も取り入れているうちの服を見せるなら、霧雨が降っていたり少し風があったりしても成り立つんじゃないかと。洋服を着るシーンにはいろいろなシチュエーションがあるので。季節や場所も、さまざまな条件に対応することが洋服の役割のひとつ。ブランドとしてそれを伝えるために、どんな天気になってもいいように、かっちり決め切らずに進めました。

片岡 演出についても同じですね。晴れてほしいと思ってはいましたが、雨が降って地面が濡れたら照明をどう調整しようか…などと、想定外のことも考えながらプランを立てました。あと、日没の時刻は緻密に調べましたね。ショーの中で背景が移り変わっていく経過を見せたかった。太陽が沈む前のマジックアワー、客入れのブルーアワー、都会のビル群の明かりなど時系列でシミュレーションし、音楽と調和させました。

meanswhile 2024 S/S-2023 A/W Collection Runwayshow

― 来場者やファッション業界の反応はいかがでしたか。

藤崎 反響は大きかったです。初めてのショーはコロナ禍ということもあって100人程度しか招待できなかったのですが、今回は海外からのお客さまも含め500~600人の方に来場いただけました。SNS上にも多くの反応があって、うれしかったですね。

片岡 会場のこと、背景の移り変わり、音楽の反響が目立ちました。ショーが終わった後、ゲストの表情を見た時にホッとした気分になりました。ショーに携わってくれたすべての方々に感謝しています。

meanswhile 2024 S/S-2023 A/W Collection Runwayshow

“友達”からそれぞれの道を歩み始めたSUGINO時代

― おふたりの学生時代について聞かせてください。

片岡 同じコースでしたが、クラスは別でした。ただ、女子が多いから男子は仲良くなるんだよね。

藤崎 夏は海や音楽フェスに行ったり、冬はスノボに行ったりして遊んでいました。ファッションについて語り合ったような記憶はないね。

片岡 そうだね。

藤崎 学生の頃は衣装や自己表現、アートとしての洋服の方に興味があったんです。今はアウトドアの要素を取り入れて“道具としての洋服”をコンセプトにしていますが、自分としては両軸持ったまま進んでいる感覚です。どちらも経験したから、meanswhileはファッションブランドとして、アウトドアブランドとは違う表現ができるのだと思っています。

片岡 僕は就職活動があまりうまくいかなくて。ちょっと悩んでいた時に、 SUGINOの助手の先生から「ショー演出の仕事がある」と紹介してもらったのが、今の会社です。「ファッションショーを観に来てください」と言っていただいたのがきっかけです。伊勢丹新宿店屋上のテントで開催されたクリスチャン・ディオールとアナスイのショーを観に行きました。ファッションショーを生で観たのは初めてで、ライブ感に鳥肌が立ちました。観客が感動しているのが伝わってくる。「こんな世界があるんだ」と、すぐにファッションショーの世界へ飛び込んだんです。

造形×表現 プロフェッショナルの世界で見えてきたこと

― 服作りと空間表現のコラボレーション自体をどう捉えていますか。

藤崎 この3回のショーづくりを通して、片岡からは表現についてたくさんのことを学びました。今も学んでいる。自分では思いつかないこと、ひとりではかなえられないこと、それをしっかりかたちにしてくれるから。僕は自分の服作りへの哲学が強くて、いつもある意味決まりきったものを作っているのですが、コラボレーションを経て表現の可能性はいくらでもある、「新しい見せ方を探るのも楽しいな」と思えるようになりました。

片岡 ファッションショーやイベントの多くはひとりで完結することが難しいのです。表舞台に立つ表現者だけでなく、裏方も含めるとさまざまな方々の協力のもと成り立っています。身近なところでいうとデザイナー藤崎をはじめ、スタイリスト服部昌孝さん、ヘアHORIさん、メイクNOBUKOさんだったり、美術施工やテクニカル、PRなどたくさんの方々の力添えがあって実現できることだと思います。加えて現場にいない方も合わせると何百人単位の方々がそれぞれのフィールドで動き、ひとつのものを一緒につくりあげる。尽力してくれた方々へ感謝しています。

藤崎 今回のショーを支えてもらったSUGINO時代の仲間は片岡だけではないんです。もうひとりの友人にも、テキスタイルのデザインをお願いしたんです。

片岡 大人になって、学生時代の仲間と一緒にひとつのものをつくれるのは素晴らしいことだよね。

藤崎 仕事を一緒にすると見る目が変わるね。「お前、意外と仕事できるんだな」って(笑)。
SUGINOでは服飾の基礎を学ぶ時間が多く、おふたりも学生時代は「これ って、意味あるのかな?」と疑問を持つこともあったそうです。「でも最近、授業で学んだ内容の点と点がつながって、線になるような感覚を味わうことがあるんです。経験を積んで初めて、学んだことのつながりが見えてきました」と藤崎さん。 ファッションの基礎的な知識やスキルをあなたの“引き出し”にしまっておけば、デザインでも演出でも、どんなプロフェッショナルを目指すにしても、将来きっと役に立つでしょう。

PROFILE

bon演出家/片岡 達彦さん
学生時代、ファッションショーやイベントの演出に特化した制作会社「bon」で経験を積み、卒業後入社。東京コレクションをはじめとしたファッションショー、ライブ、イベントなどの演出を手掛ける。

meanswhileデザイナー/藤崎 尚大さん
SUGINO卒業後、アパレルメーカーにて経験を積み、2014秋冬シーズンより独立。「日常着である以上、服は衣装ではなく道具である」をコンセプトに “meanswhile” を始動。国内はもとよりニューヨーク、パリ、香港などでも多数のメディアに掲載され、今後の活躍が期待されるブランドとして注目を集めている。

※内容は取材時のものです。